背景
なかなかデジタル化が進んでいない介護業界の中で、訪問介護を主力とするE社も例外ではなかった。オフィス移転に伴ってついにミッションとなったのが、紙文書の削減。ところが実態は各拠点でそれぞれ日々積み重なっていく文書の数々。地域差やスタッフのリテラシーの差など、一つのシステムで解決できるような問題には思えなかった。
課題
減らさなければいけないのは「紙」だけではなかった
オフィス移転を検討する一つの理由が「紙文書」だったんです。
経営企画部長のRさんは苦笑いしながら話してくれた。「創業の地にこだわりはありましたが、何しろ文書保管するには家賃が高い。倉庫を借りるといっても遠方になれば文書を探すのにも時間がかかってしまいます。今より業務効率が落ちるような手を打つわけにはいきませんでした。」
しかも文書管理の問題は、全国に広がる拠点でも起きている課題だった。
「デジタル化について、色々な手段を検討しましたが、ちゃんとしたシステムほど高額で、なおかつ地域毎の処理の違いなどに対応しようとすればカスタマイズが必要になる。そして利用者が覚えることが多すぎて、導入のハードルが高い。
正直、それほどリテラシーの高くないスタッフも全国にはいます。現場の負担を増やすやり方では、反発が出るのは間違いない状況でした。」
一方で介護業界にも、デジタル化の波は押し寄せていた。印鑑不要の流れに始まり、政府の審議会では、2021年1月に、紙媒体で行っていた文書保存について、データでの保存を原則的に認めることが決まった。ケアプランや重要事項説明書などの利用者への説明・同意のうち、これまで書面で行うこととされていたものについても、原則としてデータ化が認められる方向となったのだ。
「待ったなしの状況だけど、使える武器はない、そんな心持でした。」
課題のポイント
紙文書のあるワークフローが当たり前の業界で、減らせる見込みがたたなかった
デジタル化すべき状況ではあったが、ちょうどいいソリューションが見つかっていなかった